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DDR5メモリの4枚挿しがダメな理由

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1. メモリコントローラーへの負荷増大と信号経路の問題

CPUに内蔵されているメモリコントローラーは、各メモリモジュールと通信するための司令塔です。マザーボード上のメモリスロットは、CPUソケットから見て「デイジーチェーン」と呼ばれる、数珠つなぎのような配線方式が主流です。

  • 2枚差し(1チャネルに1枚、1DPC): CPUから最も近いスロット(A2, B2)にメモリを挿すため、信号経路が最短で済み、信号の品質が保たれやすくなります。これにより、メモリコントローラーは安定して高クロックな信号を送受信できます。

  • 4枚差し(1チャネルに2枚、2DPC): CPUから遠いスロットにもメモリを挿すことになります。これにより信号経路が長くなり、分岐も発生します。メモリコントローラーは、遠近2つのモジュールを同時に、かつ正確に制御する必要があるため、負荷が大幅に増大します。

この負荷増大の結果、CPUやマザーボードの仕様として、4枚差し構成ではサポートされる最大動作クロックが、2枚差しの場合よりも低く規定されていることが多くあります。これは故障ではなく、安定動作を保証するための設計上の仕様です。

2. 信号品質の低下とオーバークロックの難易度

メモリの枚数が増えると、電気信号の通り道(バス)にぶら下がる部品が増えることになります。これにより、以下のような問題が発生しやすくなります。

  • 信号反射とノイズの増加: 信号経路の分岐点や終端で電気信号が反射し、波形が乱れる「シグナルインテグリティ(信号品質)の低下」が起こります。

  • タイミングのズレ: 4枚のモジュール間で、信号が到達する時間にわずかなズレが生じます。

DDR5はDDR4に比べて非常に高速で動作するため、このわずかな信号の乱れやズレがデータエラーに直結します。特に、メモリメーカーが定めた高速化設定であるXMPやEXPOを適用すると、この問題が顕著になり、以下のような症状を引き起こす原因となります。

  • ブルースクリーン(BSoD)が頻発する

  • システムが突然再起動する

  • そもそもOSが起動しない

3. 相性問題と個体差

メモリチップやモジュールには、製造上のわずかな個体差が存在します。2枚差しであれば問題にならないような僅かな差でも、4枚になるとその差が積み重なり、システム全体の安定性に影響を与えることがあります。

また、「4枚組のキット」ではなく、後から「2枚組を2セット」購入して4枚差しにする場合、製造ロットが異なることで特性に微妙な違いが生じ、問題が発生しやすくなる傾向があります。

4枚差しでも問題なく運用するための条件

上記の課題をクリアできれば、4枚差しでの安定運用も可能です。

  • マザーボードのQVL(Qualified Vendor List)を厳守する マザーボードメーカーの公式サイトには、動作確認済みメモリのリスト(QVL)が必ず掲載されています。ここで「4-DIMM」構成で動作が保証されているメモリ型番とクロックを確認することが最も重要です。

  • 4枚セットで販売されているメモリキットを使用する 4枚(またはそれ以上)が1つのパッケージになっている製品は、メーカーが同一ロットのチップを使い、4枚構成での連携動作をテスト済みです。これにより、個体差によるリスクを大幅に低減できます。

  • BIOSの適切な設定と知識 XMP/EXPOが不安定な場合でも、BIOS/UEFIで手動設定を行うことで安定させられる可能性があります。これにはある程度の知識が必要ですが、有効な手段です。

  • AMD X670E/X870Eなどの高性能プラットフォーム ハイエンドなマザーボードは、高品質な部品や信号経路の最適化設計が施されており、メモリコントローラーへの負荷に強い傾向があります。ただし、これらを使っても物理法則を超えることはできず、2枚差しに比べてシビアであることに変わりはありません。

安定化のための具体的な対策とまとめ

対策

  • 最優先:QVLの確認 購入前に必ずマザーボードのサポートページで、使用したいメモリが4枚構成でサポートされているか確認しましょう。

  • BIOS設定の最適化

    • クロックを一段階下げる: XMP/EXPOを適用後、手動で動作クロックを一段階(例: 6000MHz → 5600MHz)下げると安定することがあります。

    • 電圧の微調整: メモリ電圧(VDD/VDDQ)やCPUのメモリコントローラー関連の電圧(CPU VDDQ/VDD2)をわずかに昇圧することで安定性が向上する場合があります。(※過度な昇圧はパーツの寿命を縮めるリスクがあります)

    • 安定化機能の見直し: Memory Context Restore (AMD) や DDR5 Fast Boot (Intel) といった高速起動オプションは、メモリトレーニングを簡略化するため、無効にすると起動時間は長くなりますが、安定性が増すことがあります。

    • 安定性の徹底検証 設定変更後は、MemTest86 などのメモリテストツールを数時間実行し、エラーが出ないことを確認することが不可欠です。OS上から実行できる AIDA64 のシステム安定性テストなども有効です。

まとめ

DDR5の4枚差しは、「最大容量」を優先するヘビーユーザーや特定のクリエイター向けの構成であり、一般的なゲーミングや日常利用においては、メリットよりもデメリットが上回ることが少なくありません。

高速な32GB(16GB×2)は、多くの場合、低速で不安定になるリスクのある64GB(16GB×4)よりも快適に動作します。

大容量が必要な場合は、まずマザーボードのQVLを熟読し、4枚セットのメモリキットを選ぶことが安定運用への第一歩です。安易に2枚組を買い足すことは、トラブルの原因となりやすいため注意が必要です。

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